田村友一郎 | 2017/05/17(水) 02:27

会計を済ませ出口へ向かうその扉の先、真っ赤な自販機の向こうに乗ってきた美術館の公用車がちらっと見えた。いまの時代には珍しい黒塗りのセダン、そして何よりもフェンダーミラーである。聞けば、かつて市役所で使用されていたものが美術館にまわってきたのだそう。若い女性の学芸員が運転するそのなんとも言えない違和感は、違和感というより他の形容が見つからなかった。ただ、国道沿いの砂埃が舞うドライブインの駐車場に佇む黒塗りのセダンは、どことなくしっくりきていた。